茉麻と熊井ちゃんと思春期

茉麻が加速度的に実年齢と乖離し始めているような気がします。熊井ちゃんの場合は、その身体がどれだけ大きくなろうとも、その言動や表情からまだ小学6年生なんだな、と安心してしまいますが、茉麻の場合はそうはいきません。
茉麻は恋をしているのかもしれない、なんて話を前にしたけれど、それも含めて、思春期とは人を実年齢から飛躍的に乖離させてしまう、ひとつの強烈なトランポリンなのかもしれません。それは表情にも如実に表れます。身体の造りが飛躍的に大人のそれになる時期と重なるだけに、あたかもその変化が思春期の心の変化に相関しているのではないか、という錯覚すらも抱かせます。それだけ、思春期とは恐ろしい時期であり、大体男性に比べて女性はその変化が爆発的で急進的なものです。
結局熊井ちゃんについて安心していられるのもせいぜい小学校卒業までが精一杯でしょう。いつまでたっても今のままの熊井ちゃんでいて欲しい、とは別に俺は思っていないけれど、彼女が急発進し始めた時には強く戸惑いと魅力という相反する感情を併せ抱くことでしょう。今、それらを俺が茉麻に強く感じているように。
ピュアな心を忘れずに、とは言うけれど、失恋して傷ついて、また恋をして、そうしてまっさらだった心のキャンバスを自分色に塗り、消して、また塗って。その繰り返しこそが思春期なら、思春期とはつまりピュアでなくなることなのかもしれません。その意味では、熊井ちゃんだっていつまでもピュアではないのだと思ったのでした。